公開日:2023年5月10日

利益分割法

[りえきぶんかつほう]

利益分割法(Profit Split Method)とは、独立企業間価格算定方法のひとつであり、日本における移転価格税制においては以下の3つの方法が定められている。 ・比較利益分割法(Comparable Profit Split Method) 国外関連取引と類似の状況のもとで行われた非関連者間取引に係る非関連者間の分割対象利益に相当する利益の配分割合を用いて、当該国外関連取引に係る分割対象利益を法人および国外関連者に配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいう。実務上は、第三者間における所得の配分割合の情報入手の困難性等から、一部の例外的な場合を除き、適用が難しい場合が多い。 ・寄与度利益分割法(Contribution Profit Split Method) 国外関連取引に係る分割対象利益等を、その発生に寄与した程度を推測するに足りる国外関連取引の当事者に係る要因に応じてこれらの者に配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいう。比較対象となる非関連者間取引を見出す必要がなく、企業内部の情報のみで適用することが可能である点が特徴として挙げられる。ただし、寄与度を測る分析において客観的な基準を設定するのは容易でないものとされる。 ・残余利益分割法(Residual Profit Split Method) 国外関連取引の両当事者が独自の機能を果たすこと(例えば、国外関連取引の両当事者が無形資産を使用して独自の機能を果たしている場合等)により、当該国外関連取引におけるこれらの者による独自の価値ある寄与が認められる場合において、(1)分割対象利益等のうち基本的利益を国外関連取引の両当事者にそれぞれ配分し、(2)分割対象利益等と配分をした基本的利益の合計額との差額である残余利益等(独自の価値ある寄与により発生した部分)を、残余利益等の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じてこれらの者に配分することにより、独立企業間価格を算定する方法のことをいう。この方法では、分割対象利益等を基本的利益と残余利益等とに分けて二段階の配分を行うことになり、計算手続が煩雑であるとともに、計算の結果に与える前提条件(例えば、基本的利益の水準、残余利益に係る分割要因の測定方法等)が多く、移転価格リスクの不確実性を解消する趣旨で同法を適用する場合には、一般的に事前確認制度を活用する場合が多くみられる。 OECDでの議論の状況と日本移転価格税制への影響 OECD移転価格ガイドラインでは、利益分割法の検討課題や修正案が示されるに留まっていたが、2018年6月に利益分割法に関する改定ガイダンスおよび具体的な設例が公表された。 具体的には、利益分割法の適用に当たっての基本的な考え方を纏めると共に、利益分割法が最適な方法となる場合について、それを示唆する指標やその際の利益分割法の方法について複数の例示が述べられている。本ガイダンスは利益分割法の適用を容易にすることを意図するものではなく、むしろ利益分割法の適用に対して様々な角度からの確認が必要であり、より慎重に適用を判断していく必要があることを示している。 2022年1月には、当該改訂ガイダンスはOECD移転価格ガイドラインに反映されている。